若い世代との関係に悩んで気づいた“ちょうどいい距離感”の話
「若い子と、どう距離を取ればいいのかわからない」
最近そんなふうに感じたこと、ありませんか?
がんばって話しかけたのに、反応が薄かったり、かえってぎこちなくなったり。
気をつかって踏み込んだつもりが、逆に距離を取られてしまったり。
そんな“職場のちょっとしたすれ違い”に、私も悩んだひとりです。
初めての部下・Bさんとの距離感
少し前の春、私は役職に就いて間もない頃でした。
初めて「自分が面接し、採用を決めた直属の部下」として迎えたのが、22歳の新入社員・Bさん。
真面目で丁寧な受け答えに好感を持ち、「よし、ちゃんと育てていこう」と意気込んでいました。
ある日、ふとした会話の中でこう尋ねました。
「週末は何してるの?」
「地元はこっちだったっけ?」
軽い世間話のつもりでした。
仲良くなりたい一心で、少しでも打ち解けてもらえたらと。
けれど、返ってきたのは、ぎこちない笑顔と、そっけない返答。
次の日から、Bさんの様子が明らかに変わりました。視線も、距離も。
あのとき私は、
心のシャッターが――
ガラガラッと閉まる音を聞いた気がしました。
そこから数日、必要最低限のやりとりだけが続く、どこか気まずい空気。
「このままじゃ、何も伝わらないままだ」
そう思いながら、私は静かに考えました。
距離を詰めない。けれど、ちゃんと寄り添う
あれから私は、自分の接し方を根本的に見直しました。
- プライベートには、一切踏み込まない
- でも、仕事で困っていそうなときには、すぐ声をかける
- 報告・相談・確認には、必ずリアクションを返す
- それ以外の時間は、そっとしておく
「関わらない」のではなく、「必要なときだけしっかり寄り添う」
そんなスタンスに切り替えたんです。
するとBさんは少しずつ、自分から話しかけてくれるようになりました。
報告も丁寧になり、仕事のスピードもぐんと上がっていく。
やがて、私の顔を見て「おつかれさまです」と自然に笑ってくれるようにもなりました。
あのとき閉ざされたシャッターは、少しずつ――でも確かに、心のドアをこっそり開けてくれたのだと思います。
踏み込まない。でも、信頼は深まる
※もちろん、自分のことをまったく話したくない人ばかりではありません。
たとえば「少し気にかけておいてほしいことがあって…」と、そっと打ち明けてくれる方もいます。
そういうときは、その気持ちを大切にしながら、無理のない範囲でそっと受け取るようにしています。
「プライベートに踏み込まない」というのは、ただ線を引くことじゃなくて、
相手が話したいと思ってくれたことに、静かに寄り添える距離感のことだと思うんです。
若い人は「何も言われたくない」のではなく、
“自分の世界を守ってくれる人”にこそ、心を開いてくれる。
この経験を通じて、私は本当に大切なことに気づきました。
仲良くなるって、詮索することじゃない。
信頼されるって、無理に近づくことじゃない。
プライベートに踏み込まないスタンスは、
若い人の世界を“守る”姿勢であり、実はすごくあたたかい接し方なんです。
あの記事は、私の実体験から生まれました
以前書いたこちらの記事――
プライベートは聞かない。でも仕事はギリギリまで寄り添う
これは、まさにBさんとの関係を通じて実感したことそのものです。
- 話さなくても、ちゃんとつながれる
- 踏み込まないことで、安心してもらえる
- だからこそ、仕事では本音を出してもらえる
そんな“ちょうどいい距離感”の働き方を、今は意識しています。
静かな関係が、心を動かす
「最近の若い子は、何を考えてるかわからない」
そんな声を聞くこともあります。
でも、実は若い人はちゃんと見ています。
誰が、自分を“そっとしておいてくれる人”かを。
そっとしておく。だけど、ちゃんと見ている。
無理に聞かない。でも、困っていたら寄り添う。
そんな関係が、案外いちばんうまくいくのかもしれません。
このスタンスは、今も私のなかで静かに続いています。
その後に入ってきた若いメンバーにも、同じように「そっとしておく。でも困ったときはすぐに動く」姿勢を大切にしてきました。
気づけば、部署の空気も少しずつ変わってきた気がします。
派手なやりとりはないけれど、
お互いにちゃんと信頼して、落ち着いて働ける空気がある。
そう思えるだけで、毎日が少し、心地よくなったのです。
今日、ちょっとだけ“聞かない”を選んでみる?
誰かのことを思いやるとき。
思わず何かを聞きたくなったとき。
少しだけ、聞かずにそっと見守ってみる。
それだけでも、相手の心がふっと軽くなるかもしれません。